2017H29 事例壱 「菓子製造業」第5問 解答例まとめ

■菓子製造業

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第5問(配点20点)

「第三の創業期」ともいうべき段階を目前にして、A社の存続にとって懸念すべき組織的課題を、中小企業診断士として、どのように分析するか。150字以内で答えよ。

■趣旨

非同族支配の中小企業であるA社が、「第三の創業期」といわれる新しい時代に向けて、どのような経営課題に直面しているかを分析する能力を問う問題である。
■AAS関西

組織的課題をA社のビジョンを実現するための組織構造と企業文化の視点から分析する。具体的には、①A社独自に新しい菓子を創りあげるため開発部門を設置し専門性が発揮できるか、②共に苦労を乗り越えてきた戦友の多くが定年退職した中で売上30億の中堅菓子メーカーになるビジョンを共有し一体感を醸成できるかである。
■AAS東京

課題は、事業承継を円滑に行うことである。理由は、①機能別組織のため後継者の育成が進んでおらず、高齢化しつつある社長と専務の2名に代わり経営や株式を承継する人材が不足しているため、②Z社時代から共に苦労を乗り越えてきた創業メンバーが全員退職することで、組織の一体感が失われる可能性があるため、である。
■AAS名古屋

組織的課題は、今後A社が発展を続けるための組織体制の構築である。具体的には、①営業部門で新商品開発に必要な情報収集を行うとともに、新商品開発を行う部門を立ち上げて開発を強化すること、②戦友とともに事業再建の道をスタートさせた17年前の思いを経営理念として従業員と共有し、貢献意欲を高めること、である。
■LEC

課題は、事業の承継とビジョンの実現を見据えたマネジメント層の育成である。A社は、主力商品の認知度や創業メンバーに依存し、現状の業績に安住した組織文化がある。よって、株式譲渡を含めた分権を進めるとともに、管理者層に責任と権限を委譲することで、経営参画意識の醸成と、主体的な組織文化を促すことが重要である。
■大原

組織的課題は、人的資源の確保・育成であると分析する。具体的には、高齢化が進む中で、①次世代経営者を確保・育成すること、②製造部門・営業部門・総務部門それぞれの経営幹部を育成すること、③世代交代に伴い次世代へ業務ホウハウ・知見を継承すること、④新商品の開発を実現する人材を確保し、育成することである。
■TAC

これまでのA社を支えてきた創業メンバーの多くが退職して組織力が低下する中、従来とは大きく異なる事業展開によって事業規模拡大を図っていくことになる。そのため、組織管理の体制や運営方法の制度化を図ることや、新商品開発能力や店舗運営を含めた管理能力を備えた正社員を中心とした人材の確保や育成が課題となる。
■TBC

 ①規模拡大と高齢化により社長と専務の意思決定負担が増加するため後継者候補の決定と育成を進め権限委譲する。②販路拡大による人員確保のため、正社員登用制度を導入し、能力と意欲のある非正規社員を登用する。③既存商品の売上増で有能さのワナに陥っている社員に、社長が変革の必要性を訴えチャレンジ精神を醸成する。
SLA

組織的課題は、創業の戦友が退職する中、①X社時代に事業継続困難に陥った経験と危機感の共有・伝承、②新商品の開発と首都圏出店、全国市場への進出を実現するチャレンジ精神の醸成、③A社社長の後継経営者づくりと今後の事業部制組織への変革を見据えた権限移譲の推進、④それらを実現するための人材の確保と育成である。
■MMC

A社の存続にとっては、①組織面では、新商品開発のためのプロジェクト組織の設置や、人材確保・育成のための人事部門の設置、各部門への業務に関する権限委譲と情報共有のための定期的会議の実施等のほか、②人事面では、経験者の採用や能力に応じた人員配置、新商品開発力を高めるための教育訓練の実施などが課題となる。